湘南海岸を西へ。カーステではエゴラッピンなんかを流してオシャレ系を気取る。
葉山マリーナ手前で左折、山道へ。
湘南の浮かれた喧騒はいつの間にか消た。


老人ホームを抜け、細い農道に入り、ダート道を超えた奥でボロボロボルボは止まる。




ゴミ捨て場では無い。
ここは"稲龍神山スポーツランド"。
"スポーツランド"と云っても、ヨガレッスンも無ければ、筋トレ器具等無い。
というかスポーツするための設備なんて何も無い。
プレハブ小屋の壁一面に怪しげなメッセージが書いてあったり、
休憩室なるものがあるが、カビ臭くてあまり入る気もならない。


車から降りると、やたら肩幅がでかい、オヤT一枚のおっさんが登場。
『今、1人入浴中なんで暫くお待ち下さい』
そう。ここは温泉なのだ。
オーナーのおっさんはここに湧出する鉱泉を、薪で沸かしている。
浴槽はあまり広くないので一組ずつ交代制。
そんな訳で、先客がいるので待つ訳だ。


おっさんに俺は尋ねる。
「あのー、自販機とかここにございますか?」
何しろ外は暑いんで、のどが渇いているのである。
待ち時間だし、潤したくなる。


『ここには無いです。買ってきましょうか?』
というわけでお言葉に甘える。


おっさんはクソボロボロのヤマハのバイクを持ち出し、
『よっこらせ!』と勢いつけてエンジン入れて何処かへ行ってしまった。


向こうの湯小屋から、熟年夫婦らしき声が聞こえる。
『やっぱり薪のお風呂はいいね』
なんて話してる。


俺は適当なイスに座って、森を眺めたり、空を眺めたり。

暫くすると、おっさんが戻ってきたので立ち話。


風呂が空いた。
写真撮り忘れてしまったよ。
他のサイトを参考にしてください。


外側はボロい小屋で、中も天井低かったりするが、
湯船とその周辺は清潔に保たれていた。
流石は薪は火力が強く、湯船はかなりの高温なので、
源泉で温度を冷ましながらかけ流し上体にする。
それまでの間、体を洗っていたのだが、いくら体をゆすいでも石鹸のぬめりが取れん!!
と思ったら、ここのお湯自体がアルカリ系のうなぎ湯だった!!!


湯船に入ると案の定お湯が体に絡みつく感じ。
無色透明なだけに、意外だぜ。
さらに、浴後、体が熱い!!!!
これは、結構いいお湯じゃあないですか。


なるほど、これだけマニアックでボロいのに現存してる理由が少し判った気がした。


後でおっさんと話したのだが、もともとここは
アスレチックなどがあった公園で、昔は子供が遠足に来たりしてたらしい。
しかし、バブル崩壊や娯楽施設の増加により次第に…って感じらしい。
それがこのおっさんの父親の代で、跡継ぎの息子は温泉掘り当てて営業してるらしい。
ここの称号の由来は、当時のスポーツランドの其れだったのだ。


『あそこの崖が、昔はアスレチックになっていて…』
なんて話を聞く。
まあ、今は今で、いいんじゃないでしょうか。


帰り、近くの露天でアジの干物を買って帰る。

中くらいのカレイ並にでかいアジで、油のってて旨い。
葉山や三浦は海の幸豊富です。